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六月の器 [乾山]

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六月の器は、尾形乾山の「銹絵染付白彩桐菊文 角向付」。
料理は口取「鯵寿し、鰻八幡巻、鱧の子寒天寄せ、川海老、一寸豆甘煮」。

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「銹絵染付白彩桐菊文 角向付」は、
乾山の鳴滝窯時代(元禄~正徳年間)の作品。
型紙摺りという手法を用い、錆絵と呉須で桐の花が描かれています。

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桐は初夏に淡い紫色の花を鈴なりに咲かせます。
なので今回は六月の器として用いましたが、
白彩で菊花も描かれていますから、秋の器として使うこともできます。

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裏面に記された「乾山」の銘も手描きや印刻ではなく型紙摺りで、
これも当時としては画期的な試みでした。
300年前に造られたとは思えない、モダンなセンスを感じる器です。

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四月の器 [古染付、呉須赤絵]

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四月の器は、古染付の「雲鶴文五寸皿」。
料理は「豆腐木の芽田楽」。

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古染付とは、中国明時代末期の天啓年間から崇禎年間(1621〜1644年)にかけて,
江西省の景徳鎮民窯で焼造された染付磁器のこと。
その多くは日本の茶人からの注文によって造られたとされ、
やや暗めの発色の呉須が使われているのが特徴。

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古染付の魅力は絵付けの大胆さ。
飄逸、軽妙洒脱、洒洒落落‥いろんな表現がされますが、
わかりやすく言えば、ヘタウマ。
この雲鶴文なんて、よく見ないと雲と鶴の見分けがつかない。
でも、それがいいんです。
口縁の片側にだけ五弁の花が描かれているのも、なんともお洒落。
この器を注文した四百年前の茶人のセンスは凄い、と思います。

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三月の器 [永楽]

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三月の器は、永楽善五郎家十四代・得全の「染付吹墨栄螺向付」。
料理は酢物。「赤貝、とり貝、若葱のからし酢味噌」。

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貝の中でも栄螺や蛤の形を模した器は早春の器として用いられます。
こうした吹墨(呉須を霧状にして素地に付着させる技法)が施された器のオリジナルは
中国明時代の古染付で、これは永楽得全によるその写しです。

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本来は向付として作られたものですが、
見込みが深いので、酢物や焚合にも使える汎用性の広い器です。

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二月の器 [樂]

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二月の器は、楽吉左衛門家九代・了入の「青楽四方皿」。
料理は焚合。「聖護院大根、合鴨ロース、壬生菜」。

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こうした正方形の四方皿は、節分の豆まきの枡に見立てて、
懐石料理では二月の器として用いられます。

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表は一切の装飾はなく、すっきりと仕上げられていますが、
裏面に箆使いを得意とした了入らしい独特の箆目と楽印(中印)があり
それが器の見所になっています。

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一月の器 [京焼]

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一月の器は、御菩薩焼の「若松文皿」。
料理は焼物の「鰆みそ漬」。

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御菩薩(みぞろ)焼は“古清水”と呼ばれる初期京焼の一種。
「御菩薩」は京都府北区上賀茂深泥池(みぞろがいけ)畔にあったとされる窯で、
長らく謎とされてきましたが、近年の発掘調査で、
深泥池から鞍馬街道沿いの一帯に数多くの窯跡が発見され、
ようやく本格的な研究が始まったところです。

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他の古清水の器と同様、貫入の細かく入った地に
呉須で松の葉の絵付がされています。
筆致は丁寧とは言えませんが、京焼らしい品があります。

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裏面に「御菩薩」の印があります。
御菩薩焼は詳しい系譜がわからないため、
時期の特定が非常に難しいのですが、
江戸時代に造られたことは間違いありません。

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「十二月の器」 [古染付、呉須赤絵]

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十二月の器は、中国明時代の「呉須赤絵花鳥文皿」。
料理は「ぐじ頭付 若狭焼」。
「ぐじ」とはアカアマダイの別称です。

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「呉須赤絵」とは明時代の末期から清時代の初めにかけて
中国の南部,福建や広東などで生産され輸出された焼き物のこと。
厚手の素地に濃厚かつ鮮明な絵具を使い、
赤を主体に緑や青を組み合わせて文様を描くのが特徴。

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その奔放にして力強く、華やかな絵付けを
茶人たちは高く評価し積極的に茶事に用いました。
江戸時代後期には日本の陶工による写しもたくさん造られましたが
やはり本歌の大胆な筆致に勝るものはありません。

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裏側を見ると典型的な「砂高台」になっています。
これは、重ね焼きする時、器どうしが溶着するのを防ぐため
砂をまいたことで生じるもので、呉須赤絵や古染付の特徴のひとつ。
器の真贋を見極める重要なポイントでもあります。

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「十一月の器」 [古伊万里]

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十一月の器は「藍九谷 鹿紅葉文皿」。
料理は「越前がに酢の物」。

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以前にも書いていますが「藍九谷」というのは古九谷様式の染付のこと。
最近の研究では九谷ではなく伊万里で焼かれたものというのが定説となっており、
「古伊万里寛文様式」とも呼ばれています。
この皿は寛文(1661〜72)と延宝(1673〜1681)の間、
藍九谷様式から藍柿右衛門様式へと移る過渡期に作られたものと考えられ、
染付の発色も明るくすっきりとしています。

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鹿と紅葉を意匠化した「鹿紅葉文」は
百人一首にも収められている
「奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋はかなしき」
という古今集の和歌に因むもの。
現代人の目で見てもまったく古さを感じない、美しいデザインです。

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高台の部分が少し高くなっているのは藍九谷様式の特徴のひとつ。
五寸サイズの皿にしては見込みも深くなっていて、
料理が盛りやすく、見栄えがします。

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「十月の器」 [樂]

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「十月の器」は、樂弘入の「赤楽葉皿」。
料理は「かます幽庵曲焼」。

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樂弘入は樂吉左衛門家十二代。
弘入が吉左衛門を襲名した明治四年(1871)は、
茶の湯が衰退した時期にあたり、
樂茶碗の制作だけでは家業を支えきれなかったため、
数多くの食器を手がけています。

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とりわけ葉の形を模した「葉皿」は種類が多く
デザインも大きさも様々なバリエーションがあります。
この葉皿に関しては、赤楽だけでなく青楽(緑釉)のものもあり、
茶人の用途によって使い分けていたものと思われます。

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器の裏面には弘入の楽印があります。
弘入の赤楽は火替りによる発色に特徴があり、
柔らかい赤と灰褐色が美しいコントラストをなしています。

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「九月の器」 [永楽]

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「九月の器」は、今月も永樂妙全の「黄交趾向付」。
これで3ヶ月連続、永樂妙全です。
料理は「茶栓茄子 車海老葛煮」。

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「交趾焼(こうちやき)」とは中国南部で生産された陶磁器のことで、
その名称はベトナムのコーチシナ経由で日本にもたらされたことに由来します。
交趾焼には様々な種類があり、黄色の釉薬をベースにしたものを黄交趾と呼びます。
これは永樂妙全(1852〜1927年)による黄交趾の写しです。

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器の周囲には唐草文と瓢箪が描かれています。
この意匠から交趾焼の中でも「黄南京」と呼ばれる焼き物の写しであることがわかります。
「黄南京」の写しは茶の湯の世界では人気が高く、
食器だけでなく、香合や水指、建水などにも用いられています。

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菊花を模った「菊皿」の形で、黄菊を思わせる華やかな色合い。
大きさも見込みの深さもよく考えられていて、
向付だけではなく、煮物にも酢物にも使える汎用性の高い器です。

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「八月の器」 [永楽]

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「八月の器」は先月に続き、永樂妙全の「安南染付写蜻蛉文皿」。
料理は「賀茂茄子揚げ 胡麻味噌がけ」。

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「安南焼」とはベトナムの焼物の総称として用いられている言葉。
中でも室町時代末期から江戸時代にかけてベトナムから渡来した染付の器は、
その素朴な風合いが茶人たちに好まれました。
これは永樂妙全(1852〜1927年)による安南染付の写しです。

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崩した筆致で描かれた「蜻蛉文」は特に茶人たちの人気が高く、
皿や鉢だけでなく、茶碗や香炉などの文様としても使われています。
永樂家でも保全をはじめ、歴代がこれを写しています。

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共箱には永樂妙全のサインと「悠」の印が押されています。
「悠」というのは妙全の本名で、
茶人たちの間では「お悠さん」と呼ばれていたとか。

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