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十一月の器 [その他]

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十一月の器は平澤九朗の「織部角鉢」。
料理は「鯛の頭付焼」。

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平澤九朗(1772〜1840)は江戸後期の尾張藩士にして数寄者。
有楽流の茶を嗜み、今昔庵という庵号の茶室を造り
余暇に、茶碗、茶入、花入、向付、鉢などの茶道具を焼きました。
つまり、プロの陶工ではないのですが、技工のレベルは高く
志野、織部、黑織部、黄瀬戸、唐津の茶陶の写しを数多く手がけています。

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この「織部角鉢」には“吊るし柿文”が描かれており、
おそらく実際にあった桃山時代の織部鉢の写しだと思われます。
この文様が本当に吊るし柿を表しているのかというと
実際のところはよくわかっていないのですが
古田織部の生まれ故郷が柿の生産地であることから
そう考えられているようです。

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共箱には「織戸角鉢」と記されています。
同時代の名工・加藤春岱の手を借りていたという説はあるものの
武士がここまでの器を焼くというのは驚異的なこと。
料理を盛った時の美しさは、本歌に迫るものがあります。

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九月の器 [古九谷]

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九月の器は古九谷様式の「色絵柘榴文輪花皿」。
料理は「子持鮎 烏賊風干」。

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古九谷様式とは、17世紀半ば(1640〜60年代)に
作られた、初期の色絵磁器の総称です。
かつては加賀の九谷で焼かれたと考えられていたため
「古九谷」と呼ばれていましたが
今は有田(伊万里)で作っていたというのが定説となっています。

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古九谷様式の特徴は、色絵の発色が渋いこと。
緑・黄・紫・紺青・赤の“五彩”の色絵の具を使っていますが
後の柿右衛門様式のような華やかさはなく
ややダークな色調で、それが独特の存在感を生んでいます。

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裏の側面には「折松葉文」が緑と赤の色絵で描かれ、
高台の中心には「二重角福」の銘があります。
古九谷様式の皿はファンが多く、かなり高価で取引きされていますが
それだけの魅力がある器だと思います。

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八月の器 [ガラス]

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八月の器はフランス「サンルイ」の「金彩ガラスプレート」。
料理は「賀茂茄子、隠元の胡麻和え」。

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「サン・ルイ(Saint Louis)」はフランス最古のガラスメーカー。
1767年に、ルイ15世がルイ9世(Saint Louis)の名を冠して
「サンルイ 王室ガラス工場」と名付け
1788年にフランスで初めて鉛入りクリスタルガラスの製造に成功した
‥という、由緒正しきガラス工房です。

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この金彩プレートは1890〜1900年頃に作られたもの。
サンルイのクリスタルガラスは透明度が高く、
金彩にも上質な金が使われているため、気品があり
和食の器として用いても違和感がありません。

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日本人はブランドに弱いということもあって
お茶事や懐石料理では金縁の入ったバカラの器をよく見かけるのですが、
同じ金彩ガラスでも、料理にはこうした控えめな器が合うと思います。

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六月の器 [乾山]

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六月の器は、尾形乾山の「銹絵染付白彩桐菊文 角向付」。
料理は口取「鯵寿し、鰻八幡巻、鱧の子寒天寄せ、川海老、一寸豆甘煮」。

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「銹絵染付白彩桐菊文 角向付」は、
乾山の鳴滝窯時代(元禄~正徳年間)の作品。

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型打ち成型で、型紙摺りという手法を用い
錆絵と染付で桐文を、白彩で菊を描いています。
“桐菊文”は高台寺蒔絵にもある意匠ですが
それを軽やかなタッチで表現しているのが面白いところ。

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裏面に記された「乾山」の銘も手描きや印刻ではなく型紙摺りで
これも当時としては斬新な試みでした。
300年前の作品とは思えない、モダンなセンスを感じる器です。

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四月の器 [古染付、呉須赤絵]

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四月の器は、古染付の「雲鶴文五寸皿」。
料理は「豆腐木の芽田楽」。

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古染付とは、中国明時代末期の天啓年間から崇禎年間(1621〜1644年)にかけて,
江西省の景徳鎮民窯で焼造された染付磁器のこと。
その多くは日本の茶人からの注文によって造られたとされ、
やや暗めの発色の呉須が使われているのが特徴。

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古染付の魅力は絵付けの大胆さ。
飄逸、軽妙洒脱、洒洒落落‥いろんな表現がされますが、
わかりやすく言えば、ヘタウマ。
この雲鶴文なんて、よく見ないと雲と鶴の見分けがつかない。
でも、それがいいんです。
口縁の片側にだけ五弁の花が描かれているのも、なんともお洒落。
この器を注文した四百年前の茶人のセンスは凄い、と思います。

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三月の器 [永楽]

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三月の器は、永楽善五郎家十四代・得全の「染付吹墨栄螺向付」。
料理は酢物。「赤貝、とり貝、若葱のからし酢味噌」。

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貝の中でも栄螺や蛤の形を模した器は早春の器として用いられます。
こうした吹墨(呉須を霧状にして素地に付着させる技法)が施された器のオリジナルは
中国明時代の古染付で、これは永楽得全によるその写しです。

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本来は向付として作られたものですが、
見込みが深いので、酢物や焚合にも使える汎用性の広い器です。

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二月の器 [樂]

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二月の器は、楽吉左衛門家九代・了入の「青楽四方皿」。
料理は焚合。「聖護院大根、合鴨ロース、壬生菜」。

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こうした正方形の四方皿は、節分の豆まきの枡に見立てて、
懐石料理では二月の器として用いられます。

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表は一切の装飾はなく、すっきりと仕上げられていますが、
裏面に箆使いを得意とした了入らしい独特の箆目と楽印(中印)があり
それが器の見所になっています。

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一月の器 [京焼]

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一月の器は、御菩薩焼の「若松文皿」。
料理は焼物の「鰆みそ漬」。

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御菩薩(みぞろ)焼は“古清水”と呼ばれる初期京焼の一種。
「御菩薩」は京都府北区上賀茂深泥池(みぞろがいけ)畔にあったとされる窯で、
長らく謎とされてきましたが、近年の発掘調査で、
深泥池から鞍馬街道沿いの一帯に数多くの窯跡が発見され、
ようやく本格的な研究が始まったところです。

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他の古清水の器と同様、貫入の細かく入った地に
呉須で松の葉の絵付がされています。
筆致は丁寧とは言えませんが、京焼らしい品があります。

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裏面に「御菩薩」の印があります。
御菩薩焼は詳しい系譜がわからないため、
時期の特定が非常に難しいのですが、
江戸時代に造られたことは間違いありません。

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「十二月の器」 [古染付、呉須赤絵]

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十二月の器は、中国明時代の「呉須赤絵花鳥文皿」。
料理は「ぐじ頭付 若狭焼」。
「ぐじ」とはアカアマダイの別称です。

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「呉須赤絵」とは明時代の末期から清時代の初めにかけて
中国の南部,福建や広東などで生産され輸出された焼き物のこと。
厚手の素地に濃厚かつ鮮明な絵具を使い、
赤を主体に緑や青を組み合わせて文様を描くのが特徴。

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その奔放にして力強く、華やかな絵付けを
茶人たちは高く評価し積極的に茶事に用いました。
江戸時代後期には日本の陶工による写しもたくさん造られましたが
やはり本歌の大胆な筆致に勝るものはありません。

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裏側を見ると典型的な「砂高台」になっています。
これは、重ね焼きする時、器どうしが溶着するのを防ぐため
砂をまいたことで生じるもので、呉須赤絵や古染付の特徴のひとつ。
器の真贋を見極める重要なポイントでもあります。

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「十一月の器」 [古伊万里]

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十一月の器は「藍九谷 鹿紅葉文皿」。
料理は「越前がに酢の物」。

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以前にも書いていますが「藍九谷」というのは古九谷様式の染付のこと。
最近の研究では九谷ではなく伊万里で焼かれたものというのが定説となっており、
「古伊万里寛文様式」とも呼ばれています。
この皿は寛文(1661〜72)と延宝(1673〜1681)の間、
藍九谷様式から藍柿右衛門様式へと移る過渡期に作られたものと考えられ、
染付の発色も明るくすっきりとしています。

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鹿と紅葉を意匠化した「鹿紅葉文」は
百人一首にも収められている
「奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋はかなしき」
という古今集の和歌に因むもの。
現代人の目で見てもまったく古さを感じない、美しいデザインです。

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高台の部分が少し高くなっているのは藍九谷様式の特徴のひとつ。
五寸サイズの皿にしては見込みも深くなっていて、
料理が盛りやすく、見栄えがします。

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