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「十一月の器」 [古伊万里]

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十一月の器は「藍九谷 鹿紅葉文皿」。
料理は「越前がに酢の物」。

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以前にも書いていますが「藍九谷」というのは古九谷様式の染付のこと。
最近の研究では九谷ではなく伊万里で焼かれたものというのが定説となっており、
「古伊万里寛文様式」とも呼ばれています。
この皿は寛文(1661〜72)と延宝(1673〜1681)の間、
藍九谷様式から藍柿右衛門様式へと移る過渡期に作られたものと考えられ、
染付の発色も明るくすっきりとしています。

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鹿と紅葉を意匠化した「鹿紅葉文」は
百人一首にも収められている
「奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋はかなしき」
という古今集の和歌に因むもの。
現代人の目で見てもまったく古さを感じない、美しいデザインです。

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高台の部分が少し高くなっているのは藍九谷様式の特徴のひとつ。
五寸サイズの皿にしては見込みも深くなっていて、
料理が盛りやすく、見栄えがします。

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「十月の器」 [樂]

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「十月の器」は、樂弘入の「赤楽葉皿」。
料理は「かます幽庵曲焼」。

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樂弘入は樂吉左衛門家十二代。
弘入が吉左衛門を襲名した明治四年(1871)は、
茶の湯が衰退した時期にあたり、
樂茶碗の制作だけでは家業を支えきれなかったため、
数多くの食器を手がけています。

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とりわけ葉の形を模した「葉皿」は種類が多く
デザインも大きさも様々なバリエーションがあります。
この葉皿に関しては、赤楽だけでなく青楽(緑釉)のものもあり、
茶人の用途によって使い分けていたものと思われます。

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器の裏面には弘入の楽印があります。
弘入の赤楽は火替りによる発色に特徴があり、
柔らかい赤と灰褐色が美しいコントラストをなしています。

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「九月の器」 [永楽]

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「九月の器」は、今月も永樂妙全の「黄交趾向付」。
これで3ヶ月連続、永樂妙全です。
料理は「茶栓茄子 車海老葛煮」。

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「交趾焼(こうちやき)」とは中国南部で生産された陶磁器のことで、
その名称はベトナムのコーチシナ経由で日本にもたらされたことに由来します。
交趾焼には様々な種類があり、黄色の釉薬をベースにしたものを黄交趾と呼びます。
これは永樂妙全(1852〜1927年)による黄交趾の写しです。

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器の周囲には唐草文と瓢箪が描かれています。
この意匠から交趾焼の中でも「黄南京」と呼ばれる焼き物の写しであることがわかります。
「黄南京」の写しは茶の湯の世界では人気が高く、
食器だけでなく、香合や水指、建水などにも用いられています。

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菊花を模った「菊皿」の形で、黄菊を思わせる華やかな色合い。
大きさも見込みの深さもよく考えられていて、
向付だけではなく、煮物にも酢物にも使える汎用性の高い器です。

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「八月の器」 [永楽]

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「八月の器」は先月に続き、永樂妙全の「安南染付写蜻蛉文皿」。
料理は「賀茂茄子揚げ 胡麻味噌がけ」。

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「安南焼」とはベトナムの焼物の総称として用いられている言葉。
中でも室町時代末期から江戸時代にかけてベトナムから渡来した染付の器は、
その素朴な風合いが茶人たちに好まれました。
これは永樂妙全(1852〜1927年)による安南染付の写しです。

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崩した筆致で描かれた「蜻蛉文」は特に茶人たちの人気が高く、
皿や鉢だけでなく、茶碗や香炉などの文様としても使われています。
永樂家でも保全をはじめ、歴代がこれを写しています。

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共箱には永樂妙全のサインと「悠」の印が押されています。
「悠」というのは妙全の本名で、
茶人たちの間では「お悠さん」と呼ばれていたとか。

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「七月の器」 [永楽]

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「七月の器」は永樂妙全の「青交趾笹葉皿」。
料理は「うなぎ白焼」。

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永樂妙全(1852〜1927年)は永樂家十四代得全の妻で、
得全の没後に家業を受け継ぎ、
表千家十二代代惺斎宗左の好みものなど、
数多くの茶陶を手がけた名人のひとりです。

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器の裏面に妙全の永樂印(得全と同じ)があります。
「交趾焼」とは明代末から清代にかけて
中国南部で造られたとされる色彩軟陶のことですが、
永樂家は代々その写しを得意とし、
こうした優美な名品をいくつも残しています。

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「モメンタム」に掲載されました。 [その他]

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日経BP社で発行している「モメンタム」2017年夏号の
「集めたくなるもの」という特集記事で、
20点の器を写真と共に紹介していただきました。

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まだこのブログで紹介していない器も四点あります。

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六月の器 [古伊万里]

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「六月の器」は、古九谷青磁の「牡丹文長皿」。
料理は「鮎塩焼」。

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古九谷青磁とは「古九谷の時代に焼かれた青磁」という意味で、
だいたい1650〜70年代くらいに伊万里で作られたもの。
青磁の青緑色は、釉薬に含まれる酸化第二鉄が還元焼成によって
酸化第一鉄に変化することで発色するのですが、
この時代の焼成技術はまだ未熟で、ややくすんだ色合いになっています。
でもその無骨さが、重厚な存在感を生んでいます。

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九州陶磁文化館の「柴田コレクション」の目録に
これとほぼ同手の長皿が掲載されています。
幅19センチと、向付としても使えるサイズです。

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四月の器 [古伊万里]

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「四月の器」は、藍九谷の「桜花と桜川文 平鉢」。
料理は「口取 鯛の子旨煮、針魚風干、海老パン」。

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「藍九谷」とは“古九谷様式の染付”という意味ですが、
研究調査によって、寛文期(1661〜72年)の頃に
九谷ではなく伊万里で焼かれたということがわかっています。
つまり約350年前の古伊万里の器です。
初期伊万里よりも呉須の発色が美しく、絵付に品があり、
後の藍柿右衛門様式ほど技巧的ではないところから
「藍九谷」を古伊万里染付の最高峰と考える人もいます。

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「桜川文」とは桜の花が川面に浮かんで流れる様子を文様化したもので、
「桜流し文」とも呼ばれます。
一般的には色絵で描くことの多い文様ですが、
川面も桜の花も染付の青(藍)一色で表現しているところに
350年前の日本人の高い美意識を感じます。

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三月の器 [鍋島]

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なかなかブログが更新できなかったことをお詫びします。
これまでは「向付」を中心に紹介してきましたが、
今年からはブログのタイトルを一新し
少し視野を広げて、さまざまな骨董の器と料理について
書いていきたいと思っています。

今回紹介する「三月の器」は、鍋島焼の「色絵宝珠文皿」。
料理は「すみ烏賊と車海老の鍬焼」。

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宝珠(如意宝珠)とは仏教において霊験を表すとされる宝の玉のこと。
この宝珠をモチーフにした皿がなぜ「三月の器」なのかというと、
青い宝珠の背後に桃の花がびっしりと描かれているから。
本来、この二つは関係のないものなのですが、
宝珠の形が桃の実に似ているので、
一緒に描かれるようになったと考えられています。

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器の裏面には染付で七宝結び文が、
そして高台には櫛目文が丁寧な筆致で描かれています。
このように裏側まで見所があるというのが、
鍋島焼の魅力のひとつ。

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鍋島焼は将軍家や諸大名への献上品であったことから
現代では観賞用の美術品として捉えられているのですが、
作られた目的は食器であるわけで、
やはり、料理を盛ってこその器なのだと思います。
盛期鍋島はあまりにも高価なので実用的ではありませんが、
少し時代に下がった鍋島の五寸皿や変形皿などは、
食器として再評価される時が来るのではないかと期待しています。

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器と四季 第二十回「十二月の向付」 [向付]

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第二十回「十二月の向付」は「鮃」。
添えられているのは、うど、浜防風、岩茸、山葵。
器は永楽和全の「赤絵金襴手丸紋手付向付」。

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永楽和全(1823〜96)は十二代永楽善五郎。
職人気質の人で、金襴手写しの名手としても知られています。

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腕のいい指物師が作ったと思われる立派な共箱には
「丸紋 金襴手向附」と記されています。
おそらくは、幕末期の茶人のオーダーメイドで作られたものでしょう。
伊万里の金襴手のような派手さはなく、上品で可愛らしい器です。

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